中高年の方の多くにみられる代表的な肩の痛み『五十肩・四十肩』。
正式には『肩関節周囲炎』という名称で、肩関節やその周囲で炎症が起き、
運動制限(肩の上げ下げ等の制限)や激しい痛みが起こる疾患です。
そんな五十肩は、
炎症を起こしている部位や炎症の程度により様々な症状を起こします。
「ただの肩こり…」と思っていても、
実際は「五十肩だった」なんて可能性も、もちろん考えられます。
今回は原因や症状、治療方法や予防方法についてご紹介したいと思います。
原因の説明に入る前に、少し肩の構造について説明していきます。
肩関節は上腕骨の上端にある丸い上腕骨頭と、
受け皿である肩甲骨の浅い関節窩(かんせつか)とからなる関節の事を指します。
人間の身体で最も関節可動域が大きい
という構造的特徴をもつため、関節の安定性は低く、
スポーツなどで強い衝撃が加わると脱臼しやすいという特徴があります。
そんな肩関節の安定性を補うために、
関節周囲は靱帯や『腱板』と呼ばれる筋肉などで補強されています。
※腱板…肩のインナーマッスルである
棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋からなる筋群の事で、
主に肩関節の安定性に作用する筋群です。
以上の事を踏まえ原因の方を見ていきましょう!
五十肩の原因は未だはっきりとは解明されていないのが現状です。
しかし、始めの方に少し紹介した様に、
肩関節を構成する靱帯(じんたい)や腱(けん)などが変性を起こし、
肩関節の周囲組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。
この炎症が起こる部位は、
肩関節の動きをスムーズにする役目であり、
関節の間に存在する肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)、
肩関節自体を包む関節包(かんせつほう)、
肩関節周囲の筋肉(腱板や上腕二頭筋)
などがありますが、最も多いのは腱板と言われています。
では、なぜ腱板に炎症が起こりやすいのでしょうか?
その原因は
『肩甲骨の動き』と『姿勢』
に深い関係があると考えられます。
元来、腱板自体は血流に乏しい為、
微細な損傷であってもなかなか修復されにくく、
さらに加齢により脆くなりやすいとも言われています。
その結果、腱板の機能が低下しやすく、
代わりに三角筋や僧帽筋、大胸筋といった、
肩周りの大きい力を出す筋肉が優位となってしまいます。
また、スムーズな肩甲骨の動きを阻害してしまうだけではなく、
姿勢自体も猫背傾向になりやすくなります。
猫背姿勢の状態では腕を上げる動作の時、
肩関節を形成している上腕骨と肩甲骨との隙間が狭くなり、
その間を通っている筋肉(腱板の中の棘上筋)が挟まれやすくなってしまいます。
試しに猫背の状態と姿勢を正した状態とで腕を上げてみると、
猫背の状態では腕が上まで上がり切らないかと思います。
①姿勢が悪い状態で腕を上げることにより、
↓
②棘上筋が挟まれ損傷し、炎症を起こす。その結果、
↓
③腱板の機能が低下し、
↓
④三角筋や僧帽筋、大胸筋が優位となってしまい、
↓
①さらに不良姿勢が進む…といった悪いサイクルが出来てしまいます。
・肩の違和感
・肩を動かすと痛い
・肩を動かさなくても痛い
・夜寝ていても痛い
・肩の動く範囲が狭くなる
・結帯動作(エプロンのひもを結ぶ動作)での痛み
・結髪動作(髪の毛を頭の後ろで結ぶ・ドライヤーで頭を乾かす動作)での痛み
等の症状が代表的な症状として見られます。
五十肩は時期や症状によって、急性期・慢性期・回復期に分類されます。
炎症期とも呼ばれ、
腱板やその他の炎症の起こった箇所以外にも炎症が広がる場合もあり、
肩だけではなく腕など広範囲に痛みを感じることがあります。
痛み自体は安静にしている時にも強くみられ、
夜寝ている時にも痛みを感じるのが特徴です。
この期間は人により個人差はありますが、約1~2か月くらいです。
この時期になると、
急性期の眠れないような強い痛みや安静時の痛みはなくなります。
しかし、肩を動かしていくと途中で痛みを感じ、
肩の可動域に制限が出てきます。
そういった事から慢性期は拘縮期・フローズン期とも呼ばれ、
結帯動作(エプロンのひもを結ぶ動作)
結髪動作(髪の毛を頭の後ろで結ぶ、ドライヤーで頭を乾かす動作)
が困難になります。
回復期は、肩を動かしていっても痛みや違和感を感じることが少なくなります。
しかし、まだ完全に肩を動かせるわけではなく、
可動域の制限はわずかに残っている状態です。
五十肩は時期や炎症症状の度合いなどによって治療法も変わってきます。
この時期はまずは安静にすることが一番重要で、
普段の生活から三角巾やアームホルダーで固定することが必要になります。
急性期の中でも一番初期の際はアイシングを行い、患部を冷やしていきます。
※ただし、アイシングを行うのは強い炎症症状を抑える目的ですので
3~4日間ぐらいを目安に行ってください。
夜寝ている時に痛みが強く出る方は、痛い方の肩を下にして
横向きで寝てしまうと圧迫力がかかり痛みが増してしまいますので、
痛みが出ている方の肩を上にした状態で寝ることをお奨めします。
その際は、背中側に枕や布団、クッションなどを入れ、
無理のない姿勢が取れるようにしてください。
急性期のような激しい痛みが無くなってきた慢性期からは
少しずつ肩を動かしていき、可動域の制限を減らしていきます。
また、肩を冷やさないよう温めることも大切です。
肩を温める(血流を良くする)という事で、
この時期からマッサージや鍼などを積極的に行い、
筋肉や癒着してしまった組織に対してのアプローチも行っていきます。
そして、【アイロン体操、コッドマン体操】と呼ばれる、
可動域を広げる目的の体操も行っていきます。
① テーブルなどの台に痛くない方の手を着き、
身体をやや前かがみの状態にします。
痛い方の手でダンベルや水を入れたペットボトルなどを持って腕を下ろします。
肩を支点にし腕を左右に振り子のように動かしていきます。
この時、肩~腕の力を抜いて握っているダンベルの重さを感じながら
動かすことがポイントです。
② 次に腕を上下に動かしてみましょう。
この時も肩~腕の力を抜くことが大事です。
③ 最後に円を描くようにゆっくりと回しましょう。
以上の3つの動作を各10回ずつ3セット程度行います。
もちろん、痛みの度合いや動かす範囲によっても
痛みが強く出たりすることもあるので、無理なく行っていきましょう。
ここまでくれば違和感や軽度の可動域制限はあるものの、強い痛みはないので、
アイロン体操・コッドマン体操はもちろんですが、
軽めのスポーツなども行いましょう。
原因のところでもお話しした様に、
五十肩自体の原因ははっきりとは解明されてはいませんが、
猫背が痛みを引き起こす要因の一つであると考えられます。
そこで、猫背の方にオススメなのが以下のエクササイズです。
① 腕を肩の高さまで前方に上げます。
② 脇を閉めるように肘を引いていきます。
③ 胸を張って両肩の肩甲骨を引き寄せます。
※この時肩に力が入らないように気を付けましょう。
このエクササイズを行うと良い姿勢を意識しやすくなります。
しかし、普段の生活の中でスマホを操作している時や
テレビやパソコンを見ている時など猫背の姿勢になりやすいので、
そういったところは意識して改善していきましょう。
ここまで五十肩の症状や治療法などを紹介してきましたが、
治療を行っていく上でそれぞれのタイミングが最も重要となってきます。
痛みが出ているけど、動かさない方がいいのか?
温めた方がいいのか? 冷やした方がいいのか?
そもそもマッサージをしていいのか?
など、その状況によって
最もベストな選択というものはなかなか分かりづらいかと思います。
ですので、少しでも痛みの出ている方は「安静にしていれば…」などと思わず、
是非、当院もしくは各医療機関に相談して頂くのが良いかと思われます。
また、当院にはリハビリを行うスペースもございます。
『痛みはなくなっているが、なかなか腕が上がり切らない』
『スポーツの大きな試合・大会があるから少しでも良い状態にしたい!』
といった方のサポートもさせて頂きます!
五十肩を始めとする諸症状でお悩みの方は、
世田谷区三軒茶屋にあります当「あすウェルスポーツ鍼灸整骨院」に
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