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足関節捻挫は足首を捻って受傷することです。
捻挫すると、足関節を安定させている靭帯が損傷・断裂してしまい、
関節が不安定になります。
また、重度の場合は骨折や靭帯が引っ張られ、
その靭帯の付着している部分の骨が剥がれる剥離骨折を合併することもあります。
スポーツ現場では頻繁に発生する代表的な外傷で、
日常でも段差などで生じることがあります。
膝関節靭帯損傷などに比べると、重症度は高くなりにくい傷害なので軽視されがちですが、
初期治療やリハビリを疎かにすると、
『クセ』になり再発を繰り返したり、後遺症に悩まされることになります。
足関節を内側に捻ってしまうと、主に外側の前距腓靭帯(写真①)、
踵腓靭帯(写真②)が損傷されます。
重度の捻挫では、外くるぶし後方の後距腓靭帯(写真③)、
内くるぶしと外くるぶしを繋ぐ前脛腓靭帯(写真④)などの靭帯も損傷することもあります。
外側に捻ってしまうと、内側の三角靭帯(写真⑤)が損傷されます。
三角靭帯の線維は写真の通りに分けられ、大変強靭な靭帯になります。
足関節は外側には捻りにくい構造になっているため、
外反捻挫を起こすと大半は重度の傷害となる傾向にあります。
靭帯の損傷程度によって捻挫の程度が3段階に分けられます。
1度
靭帯の軽度損傷。軽度の圧痛、歩行や関節運動時に若干の痛みがあります。
2度
靭帯の部分断裂で圧痛、腫脹が強く、歩行や関節運動は疼痛で困難になる。
3度
靭帯の完全断裂。足関節の腫脹、疼痛が強く、歩行、関節運動はほとんど不可能。
外傷が起こった場合、患部に炎症が生じます。
炎症症状は、
疼痛
腫脹
熱感(血流量増加により熱くなる)
発赤(血流量増加により赤くなる)
機能障害(疼痛のため関節運動が行えない)
の5つです。
炎症は損傷した組織を取り除いて修復するために生じます。
その炎症を放っておくと、損傷していない組織まで広がり、
血液循環が悪くなることで細胞に酸素や栄養が行き届かなくなり、
正常だった細胞まで損傷してしまいます。
ここで行わなければいけないのがRICE処置です。
RICE処置とは炎症を抑えるための処置で、
受傷後、早急に行うことで炎症の広がりを最小限に抑えます。
炎症症状は24時間~72時間続きます。
患部を動かさず安静にします。
動かすことで患部の血流量が増加し、
血液は熱を運ぶ役割もあるので腫脹、熱感、発赤が増してしまいます。
受傷後はなるべく足を床につけずに移動しましょう。
氷をアイスバッグやビニール袋に入れ、患部に当てて冷やします。
冷やすことにより患部の血管が収縮し、血流量が減少します。
血流量が減少することで炎症が抑えられ、
さらに痛覚が麻痺することで疼痛の軽減にも効果的です。
アイシング時に注意することは凍傷です。
長時間のアイシングや氷の温度が低すぎる場合に起こりやすいです。
冷やす時間は20~30分行い、
1時間休むというサイクルを炎症が収まるまで行います。
ビニール袋だと、氷の温度が低すぎて指に氷が張り付く場合があります。
その場合は少し水を入れて行うと良いでしょう。
冷湿布は冷たく感じますが、深部温度は下がりにくく、
冷却能力を考えるとやはり氷で冷やすことをお奨めします。
患部を包帯やテーピングで圧迫します。
圧迫することによって、損傷した組織の細胞液が他部位へ流れ込むのを防ぎ、
内出血と腫脹を防ぎます。
ここで気を付けたいのが循環障害です。
圧迫が強すぎると患部の血行が滞り、壊死につながりますのでお気を付けください。
患部を自分の心臓より高く上げることで血液が心臓に戻りやすく、
腫脹を抑えられます。
台などに足を上げて安静にしましょう。
患部の炎症が収まったら温熱に切り替え、患部の循環を促進させ、
少しずつ関節可動域の回復や足関節周囲の筋肉を動かしていきます。
温熱に切り替えることで患部の血流が良くなり、
酸素、栄養が供給されることで細胞や靭帯の修復がされます。
アイシングは前述の通り、血流を減少させ治癒を遅らせるので、
この時期は逆効果になります。
関節可動域の回復では、
損傷した靭帯が伸ばされて再度痛めないように、慎重にストレッチを行っていきます。
足関節捻挫後の関節可動域制限では特に背屈制限が問題視されます。
背屈はつま先を自分の顔の方向に上げてくる動作です。
背屈制限が残ったままスポーツ活動を再開すると、
膝のお皿と太ももの骨の大腿骨で形成する膝蓋大腿関節への負荷や腰痛、
膝は内側、つま先は外側を向くknee-in&toe-outを誘発し、
膝内側側副靭帯損傷、膝前十字靭帯損傷、シンスプリントなど、
二次的な外傷の発生要因になるため注意が必要です。
患部の運動ではまず足趾の運動から行っていきます。
足趾の曲げ伸ばし、足趾を開いたり閉じたりする開排運動は
前足部の荷重に重要な役割を担っています。
また、足底には感覚情報を集積するメカノレセプターが多数あり、
このメカノレセプターは床の傾きなどの情報を感知し、
転倒を防止したり、歩行や姿勢維持などにも関わっています。
患部の安静によってこの機能が衰えているので、
しっかり回復させることが重要になります。
足趾の運動は前足部の腫れをを軽減するという効果もあります。
患部の疼痛が消失しても、
一度伸ばされた靭帯は完全に戻ることはなく、関節がゆるくなります。
さらに、靭帯の中にある足首の傾きなどを感知する受容器が鈍くなることもあり、
再発しやすい状態になっています。
足関節のゆるみが大きい場合は靭帯の再建手術を行うことがありますが、
保存療法の場合は伸びた靭帯の代わりに足関節周囲の筋力でカバーしていきます。
数日間の安静によって足関節周囲筋の筋力低下が起きていますので、
筋力トレーニングを行っていきます。
筋力トレーニングは必ず強度の低いものから始め、
徐々に強度の高いものへと進めていきます。
痛みが出た場合、その強度で行うのはまだ早いということなので、
その強度から一段階下げて行います。
以下にトレーニングを紹介します。
床にタオルを敷き、その上に足を乗せます。
足趾を目一杯開き、タオルを掴み、自分の方へたぐり寄せてきます。
運動中は踵が床から離れないようにしましょう。
慣れてきたらタオルの端にダンベルなどを置き、強度を上げていきます。
チューブトレーニングでは背屈、内反、外反という動きを行います。
動作はゆっくり行いましょう。
スタートの位置に戻ってくる時は減速動作になり、
筋の出力が高まるので特にゆっくりを意識しましょう。
つま先を自分の方向へ引きつける動作です。
足関節を内側に捻る動作です。
足関節を外側へ捻る動作です。
母趾球荷重で踵の上げ下げを行うトレーニングです。 この動作もゆっくり行いましょう。
立位で行う場合は、強度が高くなるので痛みが出たり、
筋力が不足して足関節の不安定感がある場合は椅子に座った状態から始めましょう。
筋力が回復してきたらバランス要素を取り入れたトレーニングを開始します。
バランスパッドの上に片脚で立ち、30秒~40秒キープします。
慣れてきたら浮いている脚を前後左右に動かして難易度を上げていきましょう。
バランスが取れずふらつく場合は、転倒による再受傷や二次外傷の危険性があるので、
何かにつかまりながら開始して下さい。
今回ご紹介したトレーニングは受傷後、初期段階ののトレーニングになります。
回復度合いを見て、階段を一段一段上がっていくように
少しずつ強度や難易度を上げていくことが重要です。
歩行やランニング、スポーツ競技への復帰時などは再受傷のリスクが高くなるので、
テーピング、サポーターを使用することも大切です。
ただし、テーピングやサポーターに頼りすぎると
筋力や関節機能の低下に繋がるので、テーピング、サポーターは
再受傷を回避する補助としての手段と考えましょう。
また、トレーニング後は、患部の血流が増して
炎症が再燃しやすくなっていますので、必ずアイシングを行いましょう。
痛みが取れたら治療は終わりではなく、
再発予防の対策や更なる足関節機能向上までが治療と言えます。
しっかり治療を行い、後遺症を残さず競技や日常に復帰して頂きたいと思います。
足関節捻挫を受傷された方、足関節捻挫以外でもスポーツ障害でお困りの際は、
世田谷区三軒茶屋にあります当「あすウェルスポーツ鍼灸整骨院」にご相談ください。